初めてのニューヨークは、航空機のオーバーブッキングにはじまり、オーバーブッキングで終わる旅だった。
当時、ハネムーンにニューヨークへ出かける夫婦は稀で、本当ならばもっとスウィートな場所を選ぶのが普通だろうが、まぁそこは人それぞれ。
初っ端からさまざまなハプニングの洗礼を受けたおかげで、またニューヨークという、今とは違う意味で物騒で
危険な香りがする大都会での体験があったからこそ、自然と“旅の心得”の基本形が身に付いたとも言える。
話を元に戻すと、行きのオーバーブッキングでは、サンフランシスコ経由の予定がニューヨークへの直行便に振り返られ、ちょっと得した気分で日本を飛び立った。
しかし、荷物は当初の予定通りサンフランシスコ経由便に乗せられ、晴れのニューヨークでの初日は着の身着のまま過ごすこととなる。
観光から帰ったあの日、フロントで荷物のことをどんな風に尋ねたかは定かではないが、スーツケースは無事手元に届いたのだった。
ついでに、帰りのオーバーブッキングについて話すと、今度は直行便の予定が、経由便に振り返られ、サンフランシスコで一泊しなければならなくなった。
ホテルと食事(1人1回分の国際電話付き)、そしてもう二度ともらうことはないであろう
かなりの額のお詫び金を航空会社から頂き、ニューヨーク旅行サンフランシスコおまけ付きなる思い出深い新婚旅行となった。
帰国後
宿泊予定だったホテルや出会う予定だった友人たちへの予定変更の電話を終えホテルの外へ出ると、ふりそそぐカリフォルニアの日差し。
あの日のサンフランシスコは陽光あふれ、きらきらと光り輝いていた。
ホテルで頂いたオレンジジュースの美味しさは格別のものだったし…。
災い転じて何とやら。
その時のお詫び金は、しっかり次の海外旅行のおこづかいに早変わりしたのだった。 |